2006年5月

 仕事編
 生活編


   1年前の5月といえば、50年つづいた自営の化粧品店の最後の営業月だった。忙
しさの中で複雑な思いを感じながら駆け抜けた1ヶ月だったような気がする。「気がす
る」なんて書き方、たかだか1年前のことなのにと思われそうだが、この1年間の密度
の濃さはたった1年前の記憶を遠くのものに思わせるにじゅうぶんだ。


 過去にすがっている暇はなく、走り続けている感じの毎日だけど、この5月はそれが
ある意味で極まり、そしてその頂きで小さなほころびに躓いた。じぶんの力不足を思い
知らされると同時に、自己責任で完結できた自営業と、ハンドリングミスが影響を与え
る範囲が思いのほか大きい宮仕えの違いに、今さらながら恐れおののくことになった1
ヶ月でもあった。


 いとう家にもちょっとした変化があった5月でもある。これもおよそ思いもよらぬことだっ
たりした。離れてみてわかるありがたみもあるものだ。それが「家族」なのだって、ガラ
にもなく殊勝なことを考えた5月でもある。

 

◆仕事編

■5月1日

 本日は、ミーティングがひとつのあと、チームメンバーの面談をびっしりとスケジューリ
ングしていた。みんなの感じていること、不満かもしれないし不安かもしれないし、積極
的な提案かもしれない、それらの生の声を聴きたかった。そして、これから進んでいくこ
のチームの方向をシェアして、気持ちよくいっしょに仕事をしていきたいという思いを語
ったつもり。


 相手先との関係もあって具体的なことをじゅうぶんにメンバーにシェアできない状態で
進んでいるちょっと大きな案件がある。そのことで、チームメンバーとの間に壁ができつ
つある。壁というより溝と言ったほうがいいかもしれない。上と下、どちらを向いて仕事
をしていけばいいのか悩ましいところではある。


 4月の結果をとりまとめなくてはいけないし、忙しい時間を過ごしていると、ゴールデン
ウイークってちょっとありがた迷惑なところもあったりする。(なんていうとバチがあたる
かな)


■5月4日

 5月4日、祝日にはさまれた国民の休日もあざやかに晴れた。きょう午前中は「お仕
事」だ。先月、出張で名古屋にきたけれど、その時のクライアントさんから、お休みにこ
ちらに帰って来られるのならお会いしてご相談したいことがあるとアポイントがあったの
だ。


 相手先は勢いのある「企業型化粧品専門店」さん。あたらしくできた巨大ショッピング
モールに出されたお店を見せていただきながらお話をしてくる。30代半ばだと思われる
彼の話しぶりは、自信にあふれていてここちよい。わたしが化粧品専門店のあるべき
姿と思ってきたかたちを見事に具現化している。(って書くと、わたしがずいぶん立派な
考えをもっていたように聞こえるが・・・)


 化粧品店ってメーカーさんの庇護下にあることで成り立ってきた業界なので、じぶん
の力(お金)でお店のあるべきかたちを描こうとしないことが多い。となれば、どうしても
妥協が生じるわけで、そこに「企業家」が生まれてこない土壌があった。ドラッグストア
や量販店同士のシェア争いに巻き込まれ、ネット通販やコンビニの台頭によって、メー
カーの中におけるその地位が大きく下落した今になって、あわててメーカーに秋波を送
ってももう何をか言わんやだと言い切ってしまうのはちょっと冷たいかな。


 まぶしいくらいに自信をもって語れる人との会話は刺激的だしとても楽しい。仕事で
はあったけれど、きょうの午前中はとても有意義な時間を過ごさせてもらった。それにし
ても先月オープンのこのショッピングモール、となりのナゴヤドームでデーゲームがある
という要因を割り引いても、ものすごい人出だ。帰りにかつて名古屋でも一二を争う活
況を呈したO商店街の入り口をちらっと眺めたが、歩いてたった15分ほどでそこはまっ
たく別世界だった。機を見て敏ならざるものにとって今の時代の小売業はとても厳し
い。


■5月5日

 けさは7時15分に起床。8時20分過ぎに家を出て休日出勤。「いいお天気なのにね
ぇ・・・」って思いもあるけれど、ここらで1日出ておくとあとが楽なのもたしか。9時20分
過ぎに会社の鍵を開ける。お昼までに6人、午後には全部で10人ほどが出社。デイリ
ーでデータが溜まっていくセクションでは途中にワンクッション入れておくと楽だという
のはみんな同じ思いなのか。


 本日は、黙々と数字と取り組む。こういう仕事はミーティングもなく、内線電話も外線
電話も鳴らない休日向きだ。というのは、ちょっといいカッコしいかな。窓の向こうに見
える明るい青空を見ているとやっぱりちょっともったいない気もする。


■5月8日

 ゴールデンウイーク明けの月曜日。6時すぎに起きだす。けさは朝イチから全社ミーテ
ィングがあるので、いつもより1時間早く出社。


 ことしの新入社員に辞令が交付されそれぞれの配属先へ。うちのチームには配属さ
れなかった。その代わりというわけではないが、ディビジョン内で異動が行われる。うち
のチームから出ていくYくんには新天地での活躍・奮闘を期待したい。入れ替わりにう
ちに配属となるMさん、Wさんにはあたらしい風を吹き起こしてほしいところ。引き継ぎを
経て6月のはじめには新体制がスタートする。


 全社ミーティングでの「ゴールデンウイーク中、一度もネットに繋がなかった人?」とい
う問いに手を挙げた人がいた。こういう仕事をしているとネットにアクセスすることはもう
空気のような存在になっているが、インターネットがなくたって、メールをチェックしなくた
ってべつに生活に困ることはない。新聞休刊日があったようにネットにお休みがあって
もいいかも。


 よく内容は覚えていないが、昨夜は業務でちょっと詰まっていた夢で夜中に目が覚め
たりした。「小さな誤解から失敗へ。思いこみに注意」という朝の星占いも気になった
が、なんとか無事乗りきる。休み明けは課題盛りだくさん。退社は22時40分。それでも
あしたに積み残した案件もいくつか。今週は忙しそうだ。


■5月11日

 朝目覚めたときには、けさも霧雨が降っていた。きょうは某社の社長さんとお会いす
る予定が入っていたのでスーツで出勤。「雨はつらいなぁ」と思っていたが、どうにか8
時過ぎにうちを出る頃にはほとんど止んでくれた。天気予報の愛ちゃんも午後からは晴
れてくるというので傘は持たずにでてきた。


 本日もまた、詰めの甘さを痛感させられた一日。これまでキチンとシェアされてきてい
なかったから知らなかったというのは単なる言い訳。すこしでも迷惑をかけることのない
ようにと、ひたすら手を動かし、頭を働かせる。この段に至ってはそれしか取る方法が
ない。


 そんなこんなあいかわらずパラレルな展開にあっという間に時間が過ぎ、本日は久し
ぶりに会社で日付が変わった。


■5月16日

 くもり空が戻ってきた。時々にわか雨も降っている。わたしの仕事のほうもくもり時々
雨という感じ。今、ヤマ場を迎えようとしている事業がある。その影響範囲の大きさを見
誤ったことに端を発して、わたしの仕切りの失敗がずっと尾を引いていて、打つ手が後
手後手に回っている。


 自社内の開発ではなくて、相手先がある事業なのでローンチのタイミングが決まって
いる今、なんとかそれに合わせなくてはいけないという至上命題がある。それが、後手
に回ったわたしを苦しめるが、これはすべて自業自得。


 相手先との守秘義務で途中まで経過を明らかにできなかったこととか、複数業務が
走っている中でリソースが足りなかったという事実もあるが、これらは所詮「いいわけ」
にすぎない。この期に及んでそれを口にしても埒はあかない。ただひたすら協力を仰ぐ
しかない。孤立無援というわけではないが、周囲の空気にひんやりしたものを感じてい
る。


■5月22日

 きょうの往訪先は、かつてお世話になってきた、そして今の仕事への足がかりを作っ
てもらった、化粧品専門店の団体の事務局。いっしょにいろいろな取り組みをし、たま
たま同じように化粧品店の経営から離れてしまったTさんとも久しぶりに顔を合わせ
る。


 食事〜2次会とおつき合いをして、帰宅は0時50分。このところの帰宅時間と変わらな
い時間となった。でも、本日は、久々に懐かしい「熱」を感じることができた。もちろん、
今も「熱いもの」を持って仕事をしているけれど、この団体の中でしてきた、収入という
対価を得ないことに高いモチベーションを持って取り組むという行為は、宮仕えのそれ
とは微妙に違うものがある。べつに「収入」は得られないボランティアとしての行為は崇
高なものだというつもりはないが。


 昔はよかったとか、昔に帰りたいとは思わないけれど、あの時のひたむきさはどこか
に持ち合わせていきたいものだと感じた夜だった。その意味では、とても価値ある時間
を過ごせたと素直に感謝だ。あしたはきっと朝からてんてこ舞いだろうというのは想像
に難くないが、「熱」をもって取り組もう!と結構呑んだのに妙に冴えわたっている頭で
考えているわたしである。


■5月23日

 おひつじ座は運気1位。ちょっと気をよくした朝。

 「特技」を生かしてチャンス到来というような占いのコメントだったが、今のわたしには
「特技」といえるほどのものがない。街の化粧品やさんの集まりの中ではITに長けた人
といわれていたが、そんな程度のアドバンテージはその業界にあっては最低限身につ
けておくべきスキルにしか過ぎない。


 占いがいうほどの劇的なことはなく、淡々と職務をこなす一日。22時30分の退社だっ
たが、一日がとても短く感じられた。それだけぼんやりとしている間がなかったというこ
とか。


 帰りの山手線では、やたらと仕事を押しつけて何もやらない「マネージャー」の話が聞
こえてくる。わたしは、同じチームのみんなにどんな「マネージャー」と映っているのだろ
うって考えたりして・・・。まぁ、これは性格的なものが大きい。少なくとも「島耕作」には
なれないわたしだ。


■5月29日

 人間「くやしさ」を感じなくなったら成長はないよなって思っている。50を過ぎたからと
いって、まぁ無難にとか、無事これ名馬などと守りに入る気持ちはない。まだまだやれ
るだけのことはやりたいという向上心は持っているつもりだ。


 とはいっても、躓くこともある。ハンドリングミスもする。ちょっと前には激しく落ちこんだ
こともあった。迷惑をかけた影響範囲の大きさに身が縮む思いもした。本日もまた軌道
修正を迫られる事態と遭遇。全体の流れをよき方向に導くためには、自説を曲げること
には抵抗はないが、もっとくやしさを感じてもよいような場面だった。


 0時05分退社。有楽町線最終には到底間に合わないが、池袋までいつもの経路で
戻り、西武線で練馬まで帰ってくる。こちらの駅からの帰り道にはコンビニが2軒。つい
あかりに誘われて入ったところで、チョコレートなど甘いものをいくつか購入。何のかん
のいっても求めているんだなぁ・・・。


■5月30日(火)

 きのうの軌道修正は「朝令暮改」、わたしから何か仕掛けたわけじゃないのに本日ひ
ょんなことから元に戻った。なんだか不思議な気分。そのかわりにというわけでもない
が、夜になってもっと大きな変化が・・・。


 迷惑をかけてきたチームメンバーや周囲の人たちのためにはこの変化は「災い転じ
て福となす」となるのかなぁ。これを仕切り直しの時間を神様がくれた「プレゼント」、い
や「チャンス」だとポジティブにとらえられたらいいなって前向きに考えているが、対外
的な部分では、仕切り直しとなるとマイナス評価となることはまちがいない。悩ましいと
ころだ。


 23時35分の退社。池袋駅では有楽町線の最終への乗り換えに小走り。本日も3分
遅れのおかげで無事間に合った。


■5月31日

 朝から晴れた。5月最後の日は夏近しを思わせる気持ちのいい一日となった。けれど
星占いは運気最低。「何もかもがうまくいかない」「がんばりが変な誤解を生む」という。
山手線の星占いも「大事なことを決めるのは避けるべき」とのご託宣。


 でも、きのう予告したとおり決断を迫られる日となった。結論は「先送り」。詰めが甘か
ったといえばそのとおり。仕切りが悪く見誤ったというのも事実だが、間にワンクッショ
ンあったことでわたしたちの真意が伝わりきらなかったということもある。でも「言い訳」
はしない。責任はわたしにある。


 でも、この決断を下したからには、仕切り直しにあたえられた時間を「天からのプレゼ
ント」と考えて、より強固な態勢づくりのために使えばいいと前向きに考えようとしてい
るわたしだ。


 その決断の時間が迫る中、午後は弊社が業務委託している倉庫さんへ往訪にでて
きた。気温は高くなって陽差しも強くなったけれど、風もあってとても気持ちのよい午後
だった。浜松町に出て東京モノレールで「大井競馬場」駅まで。駅のホームから馬房で
カイバのバケツにその長い顔を突っ込んでいる馬の姿が見える。往復を入れて計3時
間。いい気分転換になった。


 きのうからそうなることも覚悟していたので、不思議なほどショックも落ち込みもない。
事後処理もあり、本日も23時20分の退社。終電の1本前に乗れた。


 1年前の5月31日は、自営の化粧品店の最後の営業日だった。あれから1年。短かっ
た、あっという間といえばそうとも思えるし、じつに濃密で今までの1年間とは比べもの
にならないくらいさまざまなできごとや経験をしてきた1年でもあった。さて、あすから6
月、運気も変わるかな。

 

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◆生活編

■5月1日

汗ばむ陽気、街の半袖の人が目立つ。一気に季節が早送りとなった感のある5月の初
日。9連休の人も多いのではと思ったけれど、朝のラッシュはさして変わらなかった。け
さはいつもより1本早い電車にすべり込む。お尻からぐいぐいとドアの中に入りこんでい
くテクニックもだいぶ様になってきた。


 4月の結果をとりまとめなくてはいけないし、忙しい時間を過ごしていると、ゴールデン
ウイークってちょっとありがた迷惑なところもあったりする。(なんていうとバチがあたる
かな)


 それでもなんとか22時25分に退社。あしたは退社後そのまま名古屋に帰る予定な
ので、今夜はその準備もしなくてはいけない。冷蔵庫の片づけはほぼメドがついたけ
れど、ゴミ出しをどうしようかなぁ・・・。


■5月2日

 弊社もあすからは5連休。帰省する人を中心にフロアからどんどん人がいなくなる。わ
たしも20時40分に退社。原宿駅まで定期券で戻り品川へ向かう。指定席はネットで予
約してあるけれど、名古屋までの乗車券を買おうと「指定券券売機」に向かう。1台しか
ないけれど今ちょうどひとりが操作しているだけだから、すぐに買えると思ったがそれが
大間違い。たぶん希望の時間帯が満席なのだろう、画面の「次の時間帯」や「戻る」を
何度もタッチしている。けっして気が短い人ではないが、ちょっとイラッとする。くだんの
女性、結局買うことをあきらめた。


 最終の一本前の名古屋行き「ひかり」。指定席は満席だったが、途中停車駅の静
岡、浜松、豊橋でずいぶん乗客が減り、23時25分の終着名古屋では半分以下になっ
ていた。地元駅に帰る普通電車に乗り換える。立っている人も多いが混雑というほどで
はない。向こう側にはほろ酔いの中年男性が足を拡げて座っていた。


 途中駅で、その男性の隣があいた。20歳くらいの女の子が腰を下ろした時、そのほ
ろ酔い男性にちょっとぶつかったらしい。ウトウトしていたのを起こされたのが気に入ら
なかったのか「ごめんなさいくらい言え」とか「携帯電話なんか出してんじゃない」とか
「今どきの若い奴は」とか絡み始めた。車内には「かわいそうになぁ・・・」という空気が
ただようが、まだ助けに入らなくちゃというところまではいかない。ひとこと「ごめんなさ
い」とか「すみませんでした」って言ってしまえばいいのにという感じでもある。


 しつこいおやじの口撃に、その女の娘、顔を真っ赤にして耐えていたが、すっくと立ち
上がった。まわりの誰もがどこか別のところに移るのだと思ったその瞬間、その娘がキ
レた。「そんなに強くぶつかりました?」「そこまで言われなきゃいけないようなことしま
した?」と反論をはじめたのだ。はじめこそ、何故こんな理不尽な扱いを受けなくちゃい
けないのかというようなトーンだったのが、おやじが、「車掌呼ぼうじゃないの」とか「駅
長室にいこう」などとさらに絡むので、「あんたはよっぱらっていい気持なのかもしれな
いけど、あたしは昼間勉強して、夜バイトして疲れてるんだよ」「○○学園で看護師に
なるために一生懸命やってんだよ」「あんたみたいな奴に変な言いかがりつけられたく
ないんだよ、うるせぇんだよ、このくそおやじ」と、激しく高ぶっていくばかり。


 見かねて近くにいた同年代の女性が彼女を引き離そうとするが、気持ちが収まらな
いのかなかなか動こうとしない。おやじのほうも前に立っていた男の子がなだめにかか
る。おやぢのほうはあっさり素直になって、からだがあたったことを「当たっていいのは
馬券と宝くじくらいじゃないのねぇ」なんておやじギャグを飛ばしている。なだめに入った
男の子が「あはは、おもしろいですね」なんて相づちを打ったら、その女性「そんなくだら
ないおやじの肩もつんじゃないよ」とまだまだ挑みかかろうとする。


 車内の空気は、「おやじがわるい」から「そこまで逆ギレしなくても」へとゆるやかに変
わっていく。そこで地元駅に到着。その後どうなったかは知る由もないが、世の中、スト
レスが溜まっているんだなぁと感じた次第。


■5月3日

 名古屋で迎えた朝、青空がいっぱいにひろがって気持ちがよい。これまで名古屋に
帰ってくるときはたいてい何かの用事があることが多かったので、とくにこれといって予
定のない一日を迎えるのはめずらしかったりする。


 午前中はお返しを買いに行きたいという妻と某量販店へ。東京では食品スーパーに
は結構こまめに出かけているが、量販店に出かけるのは久しぶり。本日はこの量販店
のハウスカードを持っている人対象のOFFセールもおこなわれていることもあって、午
前中からかなりの人が入っている。


 衣料品売り場では、エレベーターまわりに2品でいくらという値付けをしたお値打ち品
を配しているのはなかなか消費者心理をついていると感じた反面、レジへの並ばせ方
が拙いなって感じたりと、ついつい商売人だった感覚が顔を出す。休日の量販店の食
料品売り場はイベントや試食販売盛りだくさんでにぎやかしい。こういうお祭りのような
わくわく感は、ふだんよく行く食品スーパーにはちょっと欠けているところか。


 本日いちばんおもしろかったのは「鶏の唐揚げ詰め放題」398円。野菜の詰め放題と
違って多少変形しつつも押し込めるとあって、おばさんもおじさんも必死に詰め込んで
いた。某社のWソフトなる食パンが100円と安かったので、新幹線に乗せて持って帰る
のもどうかと思いつつ思わず購入してしまったわたしである。


 お昼をすませたあと、妻と東谷山フルーツパークまで「遠足」。名古屋市の北東の丘
陵地にある施設だけど、市営とあって月曜日が休園のため、これまで利用することが
できなかったところだ。JRで中央線高蔵寺駅まででかけ、そこから25分ほど青空の下
を紫外線をいっぱいにあびながら歩いていく。吹き抜ける風が心地よくハイキング気分
は盛り上がる。


 フルーツパークでフラワーパークではないから、しだれ桜が終わってしまったこの時期
は彩りが今ひとつだけど、入園料無料(熱帯温室入場料は300円)だし、お天気はいい
しでじゅうぶん楽しめた。そうそう、温室入場者には出口でガラガラ抽選があった。残念
ながら末等でアメひとつ。午前中の量販店でもガラガラ抽選があったのだが、こちらも
末等でBOXティッシュだったくじ運のないわたしたち。


 駅に向かう途中の極めて名古屋チックな喫茶店チェーンでお茶をして帰宅。とくに予
定がなかった一日はお天気のよさに誘われて気持ちいいアウトドアな一日になった。
去年までの自営業なじぶんではありえなかった「ふつう」の休日の過ごし方だ。こうし
てオンとオフがキチンとつけられるようになったのが、この一年での大きな変化でもあ
る。


■5月5日

 きのうのうちに名古屋から戻った。0時過ぎに着いて、洗濯物の片づけなどをすませ2
時に就寝。けさは7時に起きて休日出勤した。9時20分過ぎに会社の鍵を開け、黙々と
溜まったデータを処理する。


 17時すぎにはやばやと退社。遅まきながら初夏のアウトドアの気持ちのよさを満喫す
るために日比谷に向かう。都心のオアシス日比谷公園の中にある日比谷野外音楽
堂、これまで幾多の伝説のライブが行われたその場所にはじめて足を踏み入れる。


 本日のライブの主は「木村カエラ」。ヒット曲の「リルラリルハ」からちょっと気になって
いるシンガーだ。プレリザーブの抽選にたまたま当たったのだけど、休日出勤で東京に
戻るスケジュールでなかったとしたら、ヤフオクに出そうと思っていた。まだ明るかった
18時開演。次第に夜の帳が降りて真上に半月がおだやかに輝く19時45分終演。ライ
ブは久しぶり。野外でのライブとなるともいつ以来だろう。


 もともとモデルだった彼女だから歌唱力はもうひとつということもあるのか、野音という
会場の特性なのか、彼女のボーカルは完全にバックのギターロックと一体となってい
て歌詞はほとんど聴き取れない。でも、それが逆にポップでわかりやすいガールズロッ
クの王道という感じで楽に聴けて心地よい。Open Airの心地よさ、開演前に空けた缶
ビールで解放された気持ちも相まって伸びやかな感覚に包まれた。


 薫風かおる5月、出かけてみてよかったなぁという1時間45分だった。

■5月7日

 夜中には強い風と雨がベランダのサッシを叩いていたけれど、朝(といっても8時すぎ
だけど)にはいったん止んでいた。日中も小雨が降ったり止んだりというお天気で、止
み間をねらえば走りに出られないことはなかったが、午前中の食品スーパーでの買い
物と夕方クリーニング屋さんに仕上がったものを取りにいった他は、本日はおとなしく読
書などでインドアライフを楽しむ。


 本日読了したのは、石持浅海の「月の扉」。ちょうどけさの朝日新聞の書評欄に紹介
されていた文庫の新刊だ。ミステリーを読むのは久しぶり。休日に一気読みできてよ
かった。これは通勤途中などで少しずつ読み継ぐのには不向きだった気がする。詳しく
はこれから読む方のために触れないが、文庫本590円也はじゅうぶん元が取れたとい
うかお釣りをもらったいう感じ。ただ、ちょっと設定に無理はある。「そんな小説のように
うまくいくかよ」って、だから小説なんだってば。


 本を読むといえば、このひとつ前に読んでいたのが恩田陸の「黒と茶の幻想」だっ
た。こちらは文庫上下2冊の長編、内省的な内容でちょっと重かった。その前は「東京
タワー」だった。といっても本屋大賞を獲って今もベストセラーランキングに名を連ねて
いるリリーフランキーではなく、江國香織の「東京タワー」だ。


 江國香織かぁ・・・と意外に思われるかもしれないけれど、「流しのしたの骨」ではじめ
て彼女の作品に触れてから、バリバリの恋愛ものは避けているけれど時折読者をつづ
けている。なんでもないふつうの人のふつうの生活の描写にほぉっと頷かされるところ
があるからだ。ただ、「東京タワー」はらしくないというかちょっと馴染めなかった。


■5月13日

 6時前に強烈なこむら返りで目覚める。左脚ふくらはぎは、その後一日ずっと炎症を
起こしている感じだ。なんだか最近よく起きる気がするなぁ。


 休みのきょうは早く起きだす必要はないぞと、9時までベッドの中に。7時間睡眠だっ
た。新聞を取りに部屋のドアを開けたら外は雨。午前中は降らないはずじゃなかったの
かなぁ・・・。とはいっても、こむら返りの後遺症の残るこの状態では走りにでることはま
まならなかったけれど。


 きょうはのんびりしようと決め、まず午後は読書。天童荒太の「包帯クラブ」を読了。た
っぷりと涙してまぶたを腫らす。


 この歳になっても「傷つく」し、気づかないうちに人を「傷つけている」だろう。でもその
傷にまっすぐ向き合っていられるほどピュアではなくなっているし、傷をものともせず生
きていく術も持ち合わせいる。だいたい、いい歳をしていちいち傷ついたからといって泣
いているわけにはいかない。


 ただ、「傷」に対して鈍感な人間にはなりたくないと常々思っている。じぶんの傷=痛
みに気づくということは、他人の傷=痛みにも気づけるということ。他人の痛みがわか
るということは人にやさしくできるということだと思う。そんなことをあらためて思わせてく
れた。


 「永遠の仔」はとても重い話だったが根っこは同じところにあったのかなと思いだして
みる。この「包帯クラブ」は肩の力を入れずに読めるし、新書サイズなので、ぜひ中高
校生に手にとってほしい1冊だなぁ。あ、もちろん、昔の「中高校生」であるおじさんお
ばさんたちにも。


 肌寒くなってきてあわててコットンセーターを重ね着する。夜は18時45分に予約を入
れておいた床屋に出かける。うちから100mと離れていないその理髪店は、改装してま
だそれほど経っていない感じで、40代くらいの誠実そうなオーナー(と思うが)がひとり
でやっているようだった。以前から前を通ると気になっていたのだけど、散髪にお金を
かけるという価値観を持ち合わせていないわたしなので、こちらに来てもうすぐ1年にな
るがドアを開けることはなかった。


 ここのところ、シャンプーもシェービングもないかわりに1000円という散髪チェーンを2
回続けて利用したけれど、ちょっともみあげのあたりもうざったくなってきたこともあって
思い切って出かけてみたという次第。安価を売り物のところと違って、会話を楽しむ
(?)ことになるはずなので、かみ合わない人だったりしたらどうしようという危惧もあっ
たが、杞憂に終わった。4000円也はそれだけのことはある。


 アジの塩焼きの夕食をすませ、サッカーキリンカップを見たあと、久しぶりにユナイテ
ッドシネマズとしまえんへ映画を観にいく。22時15分のレイトショーに選んだのは「明日
の記憶」。渡辺謙扮する49歳の広告代理店のバリバリのやり手部長が若年性アルツ
ハイマーを発病するという話。父親が晩年発症していたこともあるし、51歳のわたしに
は身につまされるというか他人事ではない話。


 病気にまっすぐ向き合う覚悟を決めるのは本人も苦しいだろうけれど、それを支える
まわりがもっと強いきもちとたしかな覚悟を持ち合わせていないといけない。妻を演じた
樋口可南子が光っていたが、現実には収入の面も環境の面もふくめてなかなか簡単
な話ではない。もし、今わたしが発症したら・・・。


 こちらでもたっぷりと涙を流してきた。涙を流すことでこころにポッとあたたかいあかり
が灯るということが多いのだけど、「もし・・・」ということを考えると不安を感じざるを得な
い夜だった。「なるようにしかならない」と決まっているから「あるがままを受け入れる」
つもりだ・・・って今は言えるけれど。


■5月14日

 本日も読書にいそしむ。きょうは角田光代の「present」。おなかにいる赤ちゃんが最
初にもらうプレゼント「名前」から、もうすぐ77歳になるおばあちゃんの「涙」まで12人
の年代の違う女性が一生のうちにもらうプレゼントをテーマにした12の短編を集めた
本。松尾たいこのイラストもよかった。51のおっさんが読む本じゃないなぁとは思うが本
日も落涙。


 結婚3年目「平穏」のべつの読み方が「たいくつ」と感じられたり、変化のなさが惰性
と感じられるような毎日という夫婦の話がでてくる。じぶんのことに置き換えれば、結婚
生活も銀婚式を過ぎた今となれば「平穏」こそありがたい。けっして「たいくつ」とは読み
はしない。


 きょう「玄米」を炊いた。先週日曜日の「あ○あ○大事典」で採り上げていたのにトライ
してみたのだ。プレーンヨーグルトを少し加えると独特の臭みもとれるし、より栄養価が
高くなるという炊き方にもチャレンジ。なかなかいけるじゃんというのが感想。ただ、よく
噛まないといけないなとは思う。お昼のおにぎりには不向きかな。


 玄米食にあわせたのは、ナスと厚揚げ、ピーマン、鶏肉の味噌仕立ての煮浸し。軽く
熱を通した豆腐にニラ炒めをのせたものに、お味噌汁という献立。先の「present」の中
の一編に「鍋セット」というタイトルのものがある。これが12編の中でも出色のできだけ
ど、その中に、楽しいときだけじゃなく、落ちこんだとき、不安なとき、鍋でぐつぐつと牛
すじ肉を煮たという話がでてくる。汗を流しながら、時には涙と鼻水も垂らしながら、ア
クをすくい、鍋と向き合っていると不思議に落ち着いたというくだりがある。


 わたしは、けっして落ち込みや哀しみや淋しさの解消を料理に求めているわけではな
いけれど、キッチンに立つこと、メニューを考えたりすることがいい意味の「開き直り」=
気分転換になっているのはまちがいがない。名古屋にいるときには思いもよらないこと
だったけれど、単身生活に順応できたファクターのひとつであったことはまちがいない。


 さて、二日間の充電が終わった。あすからの新しい1週間にふたたびフルスロットル
で立ち向かおう。


■5月25日

 きのうの雨で汚れが洗い流されたという感じのキレイな青空がひろがった。この晴天
の下で、長男が本日お引っ越し。心がけのよい奴だ。朝、山手線の中から「晴れてよ
かったな」とメールを送る。すぐに「助かったよ」と返事がきた。


 配属先が決まって研修のために入っていた寮から、勤務地近くに引っ越したというわ
けだけど、大した荷物もないから今夜は段ボールに埋もれて眠る場所がないということ
はないだろう。それよりもこれまでは朝も夜も寮の食事があったからいいけれど、この
先、何かを作るなんてことはきっとしないであろう彼の食生活が心配のタネだ。


 ありがたかったのは、その新しい住まいがわたしのいる氷川台の地下鉄有楽町線が
乗り入れている東武東上線沿いということ。東京都と埼玉県だけど、都内でも東の方
の区部よりはるかに近い。何かあったら(あったら困るけれど)すぐに駆けつけられる距
離だ。


 それにしても、親子で東京ひとり暮らしなんてまったく想定外だった。名古屋の家は
妻と次男とわたしの母の3人の暮らしだ。次男は大学やバイトでうちにいない時間が長
い。きっと静かな時間が流れているんだろうなぁ。


■5月26日

 給料日あとの金曜日、夜が遅い弊社もさすがにきょうはいつもより人が少ない。退社
は23時35分。池袋からの有楽町線最終にはちょうどよい時間なのだが、この金曜日は
特殊だということを忘れていた。原宿駅で待つこと5分、ようやくホームにすべり込んで
きた外回りの電車は、ドアから紙袋がはみ出している。厚みのあるバッグなら発車でき
ないのだが、紙袋ははさんだままでだいじょうぶだったということか。


 ただ、はみ出しているということは、車内の混みかたは推して知るべし。それでもただ
でさえ遅れているのだから、乗り込まないといけない。ぐいぐいと押し込むように、そし
て押し込まれるように車内へ。この状態は、新宿で3分の2の人が入れ替わってもまた
満員となって池袋までつづいた。


 そういえば、けさのラッシュ時に乗り合わせた熟年のご夫婦、背のあまり高くないご
主人が「このつり革はずいぶん高いところにあるな」とつぶやいたあと「おまえもちゃん
と何かにつかまれよ」と奥さんに声をかける。するとその奥さん「あんたにつかまってい
るからいいわ」と答えていた。ちょっとまわりの空気が和む。


 帰りのぎゅうぎゅう詰めの電車、これくらい混みかたが激しいと、なんか不思議な連
帯感が生まれる。なかなか降りられない人がいると「降りる人がいるぞぉ」と声がかか
り、駅についてどっと人波が動いたときに転んでしまった人がいた高田馬場駅では、荷
物を拾ってあげる人、手をさしのべて立ち上がらせてあげる人など、ふだんの「隣は何
をする人ぞ」という空気とはちょっとちがっている。


 和んだのはいいが、各駅で遅れが増幅して、池袋駅に着いたときには0時8分の有
楽町線最終は間に合わない時間となっていた。でも、地下鉄も給料日あとの花金、平
日でも2分くらい遅れるのがふつうのこの最終電車は、本日5分遅れ。無事乗り込めた
がこちらも超満員。手提げのビジネスバッグを持つ手が前に立つ女性のお尻に密着す
るかたちとなる。変にバッグを持ち替えようものなら痴漢と間違えられるやもしれず、じ
っと耐えた(?)10分間だった。


 今週もずっと睡眠4時間台で駆け抜けた。この週末もどちらか1日は出社の予定。せ
めて今夜くらいは、ビールのステイオンタブを開けのんびりすることにしよう。


■5月27日

 雨の土曜日の朝。昨夜の就寝は3時、6時過ぎに目が覚めたがもちろん二度寝。8時
にまた目が覚めたが、この次は9時40分だった。まぁ、休みだもんね。燃えるゴミを出し
たあといつものようにトーストの朝食。午前中は部屋に掃除機をかける。お昼はパスタ
をゆでて大根おろしで和えてさっぱりといただく。


 13時すぎ、雨の中を出社。その出社の途中に長男から携帯にメールが届いていた。
曰く「夕食でも一緒にどうですか」。木曜日にお引っ越しをした彼は、きのう金曜日は赴
任先のレクチャーを受けただけで、実際の出社は月曜日からとのこと。なので、この週
末はどうも退屈ということらしい。ということで、19時に池袋でと約束をする。


 本日の休日出勤は少なく、14時すぎに鍵を開けたあと2時間近くひとりで黙々と仕事
をしていた。もっとも、捗ったからよいけれど。こういう時には細かい集計作業が向いて
いる。18時30分までカリカリとこなしていく。


 池袋での長男とのデートは、名古屋めしを売り物にした居酒屋さん。手羽先の唐揚げ
もどて煮もまずまず名古屋の味を再現していたけれど、みそ串カツはまだまだお上品
だった。最後、会計という段になって「社会人」の長男がお金を差し出してくる。ちょっと
感慨深い(大げさ)ものがある。もっとも完全な割り勘とはしなかった。


 こどもたちに家業を継がせようとは思っていなかったから、いずれ自宅から離れていく
ということは想定していたけれど、まさか、わたしも転職、ともにひとり暮らしをしてい
て、しかもこうして池袋で待ち合わせて飲んでいるという画は想像していなかった。不
思議な感じだなぁ。

 



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