北海道マラソン 完走記 2000.08


札幌入りした土曜日は、雨上がりで涼しく、レース翌日の月曜日はくもりから雨になってまたまた涼しくと、まさにその日だけが真夏の様相を呈したわけだが、はじめての「真夏」のフルは、我慢と粘りの耐久レースとなった。

7月、自己最高の500km以上を走ったものの、8月、このあたりでペース走、このあたりからはスピード練習をと思ったところを業爆と体調不良で、どちらもこなせないままで当日を迎え、今回はベストの走りができるとはとても思えず、もしまた来ることができたときのための下見に完走しようというくらいの「気楽」な気持ちで臨むこととなった。直前3日間も業爆と移動で全く走らなかったのだが、これが逆に疲れを解消させてくれて好結果につながった感もある。

陸連公認レースでしかも市民レースの要素も持っているので、コース誘導のために早めに整列しなくてはならないということが、3000人規模のために30分前という早い時間には終えなくてはならないという制約となっていて、今回のような炎天下の整列はランナーにとってちょっと厳しい。しかも、真駒内アイスアリーナは、氷のない夏はコンクリートむきだしなので、照り返しもあって暑さを倍加させていた。個人的には、宿泊先が変わるので荷物を移動させたりという雑事で会場入りが遅れ、全くアップができないままその列につかなくてはいけなかったが、とくに焦りはしなかった。

今回のレースは、7月31日に急逝した走友と、8月15日楽しみにしていた北海道縦断「トランスエゾ」のレース走行中に交通事故で亡くなった走友2人にお悔やみの気持ちを表すとともに、彼らに捧げる走りであり、彼らに見守ってもらう走りをするつもりだ。そのために15人の仲間とともに黒いリボンを2つウエアにつけた。

にぎやかなカウントダウンはなく、自然発生的に起きたランナーのカウントダウンのあと号砲が響き一気に列が動き始める。陸連登録でかなり前方からのスタートなので、まわりのペースに乱されないことと、先を急ぐ横着なランナーにひっかけられることだけを注意してトラックを周回し競技場の外に出る。ここからしばらくはゆるやかな下りとなるはず。オーバーペースにならないようだけ気をつけながら、からだの発する声の命ずるままに走っていく。5km手前でサブスリーランナーのまめぞうさんが追いついてきて「これで4分30くらいですかねぇ、きょうは自重しないと危ないですね」と言いつつ抜いていく。5kmは、21:46。体感より速いのは下っていたからなのか、まわりの大きな声援の後押しなのかはわからない。

5kmの給水は、コップの奪い合いだったので、混乱を避けるためにセンターライン寄りに出て通過した。いつものフルでは15kmくらいまでは給水を摂らないことがほとんどだが、今回だけはちょっとまめに摂らないとあぶないとは感じていた。ほぼ下りが終わるあたりのスポンジエードでは2個スポンジをとり、ためらうことなく頭からと首の後ろから、そして脚にとしっかり水をかけた。そしてここではスポンジだけかと思ったら、最後のテーブルで給水のコップを置いてくれていたのでありがたくいただいた。

中島公園の前を右折し、繁華街のすすきのへ。ものすごい数の応援に身震いがした。ここで10km、ここの給水では2つカップを手にした。5kmから10kmは、21:02。コップを2つとりたいと感じた自分のからだの声にオーバーペースを感じ、とにかく「完走」ということに気持ちを変える。ここから20kmまでは、陽ざしが容赦なく照りつけてくるし、給水の摂り過ぎなのかおなかが痛くなるしであとから思えばいちばんきつい区間だった。スピード練習をしていないのでストライドをのばすことはできないと悟っていたので、お得意のピッチで稼ぐ走りに切り替える。あいかわらず人並みは途切れず応援の声がうれしい。とにかく「完走」をと割り切ってからは少し気持ちに余裕ができ、こどもたちの大声の声援と手ぱっちんの要求には応えながら走れた。

20km手前の唯一の上りと聞いていたJRの跨線橋も難なくクリアでき、豊平川をもう一度渡ったところで中間点。このあたりは大きな建物もなく日陰がないので暑さがダイレクトに感じられ、ランシャツから出た肩がじりじり焼けてきているのがわかる。もっとも長く厳しく感じられた20kmから25kmが、23:03。km4分30秒を超えたものの思ったよりも落ち込んでいないのがわかって、少し完走がみえてきた感じがしてうれしくなってきた。あいかわらず給水とスポンジは確実にこなしていく。ガソリンスタンドで出してくれた冷たいタオルもありがたかった。25kmをすぎた頃からおなかの痛いのがおさまってきて、さらに完走への期待が確信に変わりつつある。

札幌駅の前を通り、北大のこんもりとした木々が見えてきた。右折したところで、ぴょっちとのりちゃんの応援を受ける。思いがけぬ場所での応援だったので驚いた。(どこで関門にかかったの?)と走りながら気にかかる。30kmを通過。あいかわらず23分台で落ち込んでいない。目にFWELLの蛍光イエローのウエアが飛び込んでくるとともに、その背中がぐんぐん近づいてくる。好調そうだったたかばやしさんだった。立ち止まりそうになっている彼に声をかけるが聞こえたかどうかわからなかった。ふたたび前を向いたらすぐにKAIKOさんが。急だったので応援にきちんと応えられなくて恐縮した。北大の周囲をまわって35kmへ向かう途中では、ガソリンスタンドの人がホースでシャワーのように放水してくれていて気持ちよかった。JRの高架下をくぐって35km。ここでも23分台をキープ。徐々に確信に変わってくるのがうれしい。左に折れ、斜め右に進み、もう一度左に回ったところで、きのう市内を車で観光したときにここも通るんだよと言われた景色が目に飛び込んでくる。そして「あと5km」の看板。

右に曲がりもういちど左に曲がっていよいよ「大通り」へ。テレビの中継で見慣れたあこがれのあの風景の中へ走り込んでいく。ここで思いがけぬ「伊藤さんがんばれ!」という声援を受ける。全然知らない人だった。新聞を手にしていたところをみると、ゼッケンナンバーから名前を調べてくれたようだった。思わず両手をあげてその声に応えた。もう完走は確信できるようになり、ゾクゾクする気分で40kmを通過。テレビで見ていたときはもっと長く走っているように思っていた大通りがあっという間に終わった。右折するといよいよ繁華街を抜けゴールの中島公園につづく直線、もうトップランナーが通過してから1時間近くは経とうかというのに応援の人の人垣は途切れず、ランナーにとっては2kmにわたる「花道」の気分だ。

両側の大きなビルが途切れると前方に中島公園のゲートが見えてくる。ふくらはぎに痙攣の予兆を感じる。「なんとかもってくれ!」と必死で祈りつつゴールをめざす。いよいよ公園の入り口、ここからあと700mだ。完走はもう完全に確信していたが、この700mは実に長かった。途中、EUGENEさん、フェルマータさんの声援をうけるが、表情にちょっと余裕がなかった気がする。このあたりで痙攣を起こしストレッチしていたまめぞうさんを追い越していたらしい。少し先では、陸連登録ゼッケンをつけた女性ランナーが、朦朧としているのかふらふらと歩いている。声をかけたが反応は鈍かった。オーバーペースだったのか給水の失敗か、きょうのレースの厳しさをあらためて痛感する。

長い長い700mが終わりゴールゲートに飛び込む。3:11:48 うれしさがこみ上げてくる。最後まで落ち込みが少なく走れたことが何よりうれしい。涼しくてスピードや順位を競うようなレースにならず真夏の耐暑耐久レースとなったことが、8月の調整がうまくいかなったわたしには幸いだったような気がする。「無事に完走」が目標のレースになったことで、先月までの走り込みが効いたように思えるからだ。

どんなレースのどんな苦しい場所で会ってもいつもニコニコしていた走友を思い、苦しい時には黒いリボンに手をやって元気をもらいながら走ってきた。だから絶対「笑顔」でゴールがしたかった。少し苦しげかもしれないけどなんとか「笑顔」で帰ってこられたことがうれしい。

メダルを首にかけ、仲間と話を交わしていると急に痙攣の予兆が強くなってくる。芝生に腰をおろして、なんとか最後までがんばってくれた脚に感謝の気持ちをこめながら、アイシングの氷を押しあてる。ランパンからのびる給水とスポンジの水でびしょびしょのシューズとソックスまでのじぶんの脚がとてもいとおしく思えた。

真夏のフルマラソンは調整がホントにむつかしい。とりわけことしの名古屋は半端じゃない暑さだったし・・・しかし、途切れることのない応援とちょっとだけエリートマラソンの気分も味わえるこの大会はまたいつか走ってみたいと思う。そのためには、走力とともにお金と暇も蓄えなくちゃいけないけれど・・・

 

LAP

TOTAL

ピッチ

ストライド

ペース

5km

21:46

200

115

4:21

10km

21:02

42:48

201

118

4:12

15km

21:52

1:04:41

200

114

4:22

20km

22:08

1:26:49

200

113

4:26

25km

23:03

1:49:52

201

108

4:37

30km

23:24

2:13:16

199

107

4:41

35km

23:39

2:36:55

200

106

4:44

40km

24:18

3:01:14

197

105

4:52

goal

10:33

3:11:48

198

105

4:49